リアルでライブなバイブス求めて三千里 横浜『セルインタラクティブ』篇
トム・イシカワ
セルインタラクティブ
連載『トムの、ちょいとお邪魔させていただきます by トム・イシカワ』
優れたアウトプットの背景には、必ずそれを生み出す場と人がいます。どんな価値観で働いているのか。どんな距離感で会話が交わされているのか。どんな空気の中で、ものづくりが育っているのか。そうした要素は、作品そのものと同じくらい、その会社の輪郭をつくっているはずです。
この連載では、クリエイティブ業界の採用やキャリア支援に携わってきたトム・イシカワ氏が、気になる現場を訪ね、その場所ならではの空気や関係性を見つめていきます。制度や肩書きだけでは見えてこない“会社らしさ”を、現場での体感を通して記録していくオフィス探訪記です。
はじめに
こんにちは、トム・イシカワです。
私は日々、クリエイティブに関わる企業の採用支援をしながら、クリエイターのキャリア支援をしています。
採用担当者と話せば、その会社が大切にしていることや、どんな人と一緒に仕事がしたいかが伝わってきますし、求職者と話せば、どんな環境で働きたいか、何に惹かれて会社を選ぼうとしているかが見えてきます。
その双方の声を聞き続け、ご縁を結ぶ中で、ずっと気になっていることがありました。
それは、採用サイトや求人票には載らない、でも確かにある「その会社らしさ」が、どこかで削ぎ落とされてしまっているのではないか、と。場が持つ空気感、人と人の温度感や距離感、何気ない会話の中に滲む価値観。そういう柔らかくて、言語化しにくいものほど、実は「理屈抜きで、ここで働いてみたい・・!」と思わせる力を持っていたりするのではないかーー
よーし、だったら、私が書いてみようじゃないか。
いわゆる「採用支援」というお題目をあえて持たず、ふらっと遊びに行って、気になったことを自分の言葉で書く。PRでも評論でもなく、ただ感じ、「いいな」と思えたことを書いてみる。そういうコンテンツが、私だったら書けるかもしれないなぁと思って始めた連載です。
S5-Styleというステキな場で、この連載がいいスパイスになっていけるといいな。
最初は、ほんの立ち話だった
きっかけは、写真だったのかもしれない。
2025年12月、iDIDナイトフリマという業界イベントで、私はなぜか写真の展示販売企画の売り子をしていた。この企画を語りだすと本筋からずれ、1万字コースになって田渕さんに怒られそうなので割愛する。いや、それだと文脈がなさすぎるので、ざっくり伝えると「クリエイターの皆さんから写真を募って販売し、収益を未来のクリエイターに募金する」という企画だ。
カメラを買って1年ちょい。まだまだ駆け出しもいいところだってのに、人様の写真はまだしも、自分の写真に値段をつけちゃうとか、今思うとなかなかに無謀なチャレンジだった。
まあ、そんなことはさておき、本当に売れるのだろうか・・と必死こいて売り子をしていた時、セルインタラクティブのお二人(髙橋さんと梶田さん)に出会ったのだ。企画に大いにご賛同いただき、笑顔で買ってくださったのは今でも忘れられない。
お互いに「初めまして〜、存じ上げてます〜」なんて挨拶をして、少しだけ立ち話をした。それだけだ。それでも人間とは単純なもので、これまで以上に実績のアウトプットをウォッチするようになり、企業サイトに訪れる回数も増えた。
セルインタラクティブの制作事例:Shiroito Co.,Ltd
セルインタラクティブの制作事例:Sumitomo Forest Service
うーん、見れば見るほど、気になってきた。
WebサイトのUI、映像、インスタレーション。ひとつひとつの実績に、確かな意志とこだわりが滲んでいる。派手にアピールしてくる感じじゃないのに、そのキュートでエモーショナルな動きがじわじわと気になってくる。
「会いたい」という気持ちが抑えられなくなったその瞬間、「会いたいです」と連絡をし、無事に快諾いただいたのだ。
こういう会社に限って、採用サイトは静かだったりする。大声で「来てください」とは言わない。でも実績やメンバー紹介を見ていると、なんとなく引っかかってくる。そういう引っかかり方をする会社は、たいていステキな会社なのだ。
というわけで、横浜へ向かった。
一瞬、オフィスだとわからなかった
住所を確認し、馬車道駅で降り、正直ちょっと戸惑った。いや、だいぶか。
「KITANAKA BRICK&WHITE」と書いてある。レンガ造りの、歴史のある建物に見えるがなんとも新しい建造物。眼の前には美味そうなフルーツパーラー、隣にはロックなBillboard Live YOKOHAMA。
ほ、ほんとに、ここがオフィスなのか・・?
どう見てもオフィスっぽくない建物に恐る恐る足を踏み入れる。グリーンやインテリアのお店がある。違う、ここじゃない。ん??ふと左を見ると「cell division group」の文字が。やっぱりここだ。
いや、待て待て待て。目の前はダンススタジオじゃないか。いいや、おれは騙されないぞ、ここにオフィスがあるはずがない!!と思っていたその瞬間、知った顔のお二人が現れた。
ここなんだww
天井が高く抜け感がヤバい。白を基調とした広々とした空間。どうやら、DANCE BASE YOKOHAMAというダンススタジオさんと共同運営している場所のようだ。どう考えてもオフィスじゃない、100歩譲ってコワーキングスペースと言われれば、まあそうかと信じてしまいそうなシャレオツ開放空間だ。
THE クリエイティブな洋書が並ぶ本棚の奥には会議室や倉庫があり、グリーンがそこかしこに置かれ、白で無機質になりがちな空間に清涼感と穏やかさをもたらしているようだ。
いやはや、これは通いたくなるオフィス。各々集中して仕事に取り組んでいたが、この素敵すぎるオフィスを誇りに思ってるような、そんな雰囲気も伝わってきて、なんだかほっこりしてしまった。いいないいな、とってもいいな・・と思っていたら、「横浜に仕事しに来た時はここで仕事させてください」と言っていた。いや、図々しすぎるだろ。(でも、快諾いただいただいてしまったのだけども)
働く場所は、その会社の価値観がそのまま出ると思っている。「どこで仕事するか」より「どういう状態でいるか」を大事にしている会社は、空間の作り方が違う。
ダンススタジオの隣で仕事をしている、その事実だけで、根底にある思想に触れられた気がした。
エッ、まさかこんなところで会えるなんて
話は戻って、オフィスに入った時。お出迎えしてくれたお二人のうしろにどこかで見たような見たことないような、明らかに入社して間もない雰囲気の若い方がいらっしゃった。
あれ、この方どこかで、会ったことあるような・・
「エェッ!!もしかしてあの時の?!」
「そうです!あの時助けていただいた鶴です・・🥹!!」
なんて話は一言もしてないが、まあそういう感じの再会だったのだ。以前キャリア相談に乗ったことがあった。たしか彼女はまだ学生で、進路を迷っていたタイミングで話をしていた。
「どちらの会社がいいか」という問いに対して、私は直接的な答えを出さない。本人のやりたいことや、大切にしている軸、どういう環境で伸びるタイプかという話にフォーカスしながら、一緒に進路を考えた記憶が蘇ってきた。
そうか、あの時のあの方が。話してるうちに「そういえばセルインタラクティブさんっていってたな・・」と思い出していたのはここだけの秘密だ。
こうやってたった数時間だけすれ違っただけの方とまた交差し、「元気にがんばってます!」なんてのを見るたびに、目頭が熱くなる。胸がキュンとなる。腹が減る。ラーメンが食べたい。なんじゃそら。
たぶん全部の感情が同時に来たんだろう。とにかく、思わぬ再会にびっくりしたのだ。
キャリア支援という仕事をしていると、たまにこういうことが起きる。
どこかの会社、どこかのイベント、どこかの飲み会。あの時の迷いや選択が、今ここでの再会につながっている。本人にとっては、地続きの“何気ない今”なんだろうけど、その間を共有していなかった私にとっては時を隔てた“感動的な今”なので、気を抜くとうるっとしてしまうくらい感動する出来事なのだ。
いい選択だったんだな、そう思える目の前の笑顔が、なによりの答えだった気がする。
感動の再会もつかの間、
見せ場だってのにガチャガチャが全然開けられない
元気にパワフルに頑張ってるその方にご案内いただき、オフィス中央にあるバーカウンターの横にあるセルガチャなるものをご説明いただいた。聞くに、社員同士の感謝の印としてコインを贈る仕組みがあり、そのコインで回せるらしい。こういうのいいよね。せっかくだからということで、その方が回してみることになった。
全然、開かない(笑)
髙橋さんと梶田さんは、少し遠くから微笑ましく見ている。この瞬間は逃したくないなと、ひたすらにシャッターを切りながら、妙に納得した部分もあったのだ。
ああ、こういうところかもしれないなぁ。
肝心な場面で全然うまくいかない。でも、焦っている本人も、見ているお二人もなんとなく楽しんでいる。そういう空気と関係性がこの場所にはたしかにある。仕組みや制度も大事なんだけど、人と人の間にある柔らかさ、そういうものがこの会社の“らしさ”なんだろうなぁ、そんな気がした。
柔らかいけれど、本気の場所
ここで働く人たちは、柔らかい。
言葉も物腰も、押しつけてくる感じが全くないのだ。
雑談しながら話を聞いていると、「こういう人たちと一緒に仕事したいな」という気持ちが自然と湧いてくる。でも、話が深くなれば深くなるほど、デザインやエンジニアリングに対する情熱はしっかりと溢れてくる。柔らかい関係性と本気の想いが、矛盾なく同居している。そういう会社だ。
多摩美術大学出身のメンバーが多いと聞いた。代表の田中さんとのつながりがあるようで、アカデミックな知見がベースに流れている感じもする。デザインや美術を本気で学んできた人たちが、デジタルの表現にどう向き合うか。その問いを持ち続けながら仕事をしているような空気がある。
Webやブランディングだけに閉じているわけでもない。インスタレーションやリアルな場の表現にも今後はさらに力を入れていく方向性を持っているようだ。デジタルとフィジカルを行き来しながら表現の領域を広げようとしている。
こんなに空気感の良い場所で、こういう人たちと、本気でものを作る。それができる環境がここにある。
会社を選ぶ時に「何をやるか」と同じくらい大事なのが、「どういう人たちと、どういう空気の中でやるか」だと思っている。スキルは場所が変わっても持っていける。でも空気は、そこにしかない。
また来てもいいですか、と言いたくなる場所だった。
おわりに
ふらっと遊びに行って、気になったことを書く。
それだけのことなのだけど、行くたびに「来てよかった」「会えてよかった」と思う場面に必ず出くわす。求人票には載らない人の顔、空気の温度感やおかしくてかわいい瞬間。そういうものを、この連載を通じて表現出来たらいいなと思っている。
さてさて、次はどこに行こうかな。
気になっている会社が、まだまだたくさんある。
セルインタラクティブ
横浜を拠点に、Web・映像・空間・ブランディングを横断するクリエイティブチーム。デジタル×ブランディングでファンを生み出し続けることをミッションとしている。グループ会社にCell Division、Cell Worldingを持ち、デジタルとリアルを横断しながら表現の領域を広げ続けている。
現在、以下の職種を募集中
•アートディレクター/デザイナー
•フロントエンドエンジニア
採用情報(Notion)
セルインタラクティブ公式サイト
直近の実績・トピックス
トム・イシカワ(石川 智規)
ウェブスタッフ株式会社/国家資格キャリアコンサルタント。IT・Web領域に強みを持つ人材サービス会社のシニアコンサルタントとして、企業の採用支援やクリエイターのキャリア支援を行う。これまで支援してきたクリエイターは1,000名以上。好きが高じてポートフォリオだけのギャラリーサイト「GOOD PORTFOLIO」を運営。ポートフォリオを眺めるのが三度の飯より好き。
@tomonorix0805
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2026.04.27
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