9人の問い、9つの答え ─ CREATIVE CLASS『ロジックとセンスのデザインブート』アウトプット編
田渕 将吾
CREATIVE CLASS
ひとつのサービスが形になるとき、そこには、作り手の問いが存在します。
なぜそこに違和感を持ったのか。
今あるものの何を変えたいのか。
誰にとって、どんな状態になれば少し良くなるのか。
CREATIVE CLASSで開講した田渕将吾のコース『企画からビジュアルまで突き通す─ロジックとセンスのデザインブート』では、9名の受講生が約3か月をかけ、それぞれ異なるテーマからデジタルサービスやメディアを企画しました。
日常の違和感を拾い、リサーチし、問いを立て、発想を広げ、体験へ落とし、最後はUIやビジュアルとして形にする。
同じプロセスを辿っていても、最後に生まれた答えはまったく違うものになりました。
この記事では、一人ひとりがどんな違和感から始まり、どこで考え方が変わり、どんな答えへ辿り着いたのかを、それぞれの目線から振り返ります。
各章は、最終プレゼンテーションおよび制作資料をもとに、本人の言葉や意図を尊重し、本人確認のうえS5-Style編集部で一人称に再構成しています。

各プロジェクトは、制作者による独自の研究・制作成果として本記事に掲載しています。各プロジェクトに含まれるコピー、図版、UI、ロゴ、画像その他の制作物に関する著作権等の権利は、各制作者または正当な権利者に帰属します。
本記事への掲載は、これらの著作物・知的財産の利用を許諾するものではありません。権利者の許諾なく、転載、複製、改変、配布、商用利用等を行うことはできません。
掲載作品の利用・転載・商用展開等をご希望の場合は、各制作者までお問い合わせください。
Ambi 謝 茉晗

受講理由
普段の仕事では、コンセプト立案や制作など一部のフェーズを担当することが多く、サービス全体を自分で設計しきる機会は多くありませんでした。企画から体験設計、アウトプットまでを一貫して考え、領域を越えてプロジェクトを支えられる力を身につけたいと思い参加しました。
謝 茉晗
発言しなくても、SNSに参加できるだろうか?
私はSNSを見ることは好きですが、自分から積極的に発信するタイプではありません。
投稿したり、コメントしたり、リアクションしたりすることが「参加」として扱われやすい一方で、誰かの投稿を読んだり、その場の空気を感じたりすることも、本来はひとつの関わり方なのではないかと思っていました。
発信し続けることには少し疲れる。でも、誰ともつながらない場所へ行きたいわけでもない。静かにいられることと、誰かの存在を感じられること。その両方が成立するSNSをつくれないだろうか。
そんなことを考えている中で、ヒントになったのが「部室」でした。
部室では、全員がずっと話しているわけではありません。よく話す人もいれば、静かに誰かの話を聞いている人もいる。それでも同じ場所にいれば、その人も場の一員です。
Ambiでは、その関係性をSNSへ持ち込み、参加を「する/しない」の二択ではなく、それぞれの距離感を持ったグラデーションとして捉えました。
誰かがいることも、人数やオンライン表示で強く伝えるのではなく、ルームの色や淡い光から「気配」として感じられるようにしています。
もうひとつ大切にしたのが、終わりのあるタイムラインです。スクロールするほど少しずつ余白が広がり、「今日はもうすぐ読み終わる」と自然に感じられる。無限に情報を見せ続けて滞在を促すのではなく、必要なものを受け取り、誰かの気配を少し感じたら、そのまま静かに閉じられる。
つながりを強くするのではなく、つながりとの距離を自分で選べること。
その感覚を、Ambiでは体験とビジュアルの両方からつくろうと考えました。
私が出した答え|Ambi
見るだけでもいい。少し反応してもいい。話したくなったときだけ話してもいい。
それでも、「自分もここにいる」と感じられる。
SNSへの参加の仕方を、もう少し広く捉え直すことが、Ambiで考えた答えです。

SNSのリプロダクト作品「Ambi」
• 企画・制作:謝 茉晗
• 所属:ワヴデザイン株式会社
• お問い合わせ先:メール
PLAYCE 田中 翔也

受講理由
ディレクションの経験はありましたが、企画の上流から入り込み、その意図をデザインまで一貫してつなぐ力には課題を感じていました。考えることとつくることを往復しながら、仕事の幅をもう一段広げたいと思い、この講座に参加しました。
田中 翔也
作品を見終えたあとに残るものを、どう保存できるだろうか?
今回テーマにしたのは、動画配信メディアです。
スマートフォンでもPCでも、見たいと思ったときにすぐ作品へアクセスできて、一本見終えればそのまま次へ進める。映像は以前よりずっと身近になりましたが、その一方で、ひとつの作品を見終えたあとに立ち止まる時間は短くなっているのではないかと感じました。
視聴履歴を開けば「何を見たか」は分かります。でも、そこに残っているのは作品名であって、そのとき自分が何を感じていたのかまでは残っていません。
映画を見終えた直後には、すぐに感想を言葉にできないことがあります。何かが心に残っているけれど、まだうまく説明できない。私は、その輪郭のない感情も含めて作品体験なのではないかと思いました。
そこでPLAYCEでは、「何を見たか」ではなく、「何が自分に残ったか」を記録することを考えています。視聴履歴を残すのではなく、作品と自分の間に生まれた記憶を残すイメージです。
デザインでも、作品が終わった瞬間に次の情報を並べるのではなく、少しだけ何もない時間をつくりました。ただの黒ではなく、今見ていた作品の色や、スクリーンに残ったようなかすかな光が漂っている。その「残光」をビジュアルの核にしています。
情報を増やすことで作品体験を補うのではなく、むしろ余白をつくることで、見終えたあとに残った感情をゆっくり受け止められる場所にしたいと考えました。
私が出した答え|PLAYCE
作品を見る。何かが残る。その余韻を受け止め、いつかまた辿り直す。
映像作品を「見たもの」として消費するのではなく、自分が体験したものとして残していく。
それがPLAYCEで加えたかった時間です。

SALADA LOOP 岡本 直子

受講理由
以前から、企画やブランドの考え方が、Webやパッケージ、空間デザインにまで一つの世界観としてつながっていく、その深い思考やプロセスに惹かれ、もっと学びたいと思っていました。 また、目の前の制作物をつくるだけでなく、企画や戦略から考え、ブランドの世界観をデザインで形にする力を身につけたいと思い、受講を決めました。
岡本 直子
企業SNSは、数字を伸ばすだけでいいのだろうか?
企業のSNS運用に関わっていると、どうしてもフォロワー数やインプレッション、エンゲージメントといった数字を見る機会が増えます。投稿するたびに結果を確認し、次は何を出すかを考える。もちろん、それらは大切な指標です。
でも、数字が伸びたことと、ファンとの関係が深まったことは本当に同じなのだろうか。運用を続ける中で、そんな違和感を持つようになりました。
最初は、AIを使って投稿づくりを効率化するサービスも考えていました。ただ、既存のツールを調べると、投稿生成や分析の機能はすでにかなり充実しています。それだけでは、自分が感じていた違和感には答えていないように思いました。
そこで、サービスの中心を「何を投稿するか」ではなく、「今日は誰と、何を話すか」へ考え方を移してみました。
投稿する前に、まずファンの声を見る。最近どんなことに興味を持っているのかを知り、そのうえで会話のテーマを考える。投稿後も数字だけで終わらせず、どんな反応や会話が生まれたのかを振り返り、その声をまた次の企画へつなげていく。
サービス名の「SALADA LOOP」には、「つながる → 声を聴く → 一緒につくる → またつながる」という循環を込めました。
食品ブランド向けのサービスだからこそ、デザインにも野菜やキッチンのモチーフを取り入れています。業務支援ツールとしての分かりやすさは保ちながらも、無機質な管理画面ではなく、人との関係を育てるサービスらしい温度や親しみを感じられるものにしたいと考えました。
私が出した答え|SALADA LOOP
企業SNSを、「投稿をつくる仕事」から「会話を育てる仕事」へ変える。
ファンの声が次のブランド活動へ循環していくことが、SALADA LOOPで目指したことです。

SNSのリプロダクト作品「SALADA LOOP」
• 企画・制作:岡本 直子
• お問い合わせ先:X
Horizon 熊藤 直

受講理由
独学と実務の中で、違和感には気づけても、それをどんな問いに変え、どんな解決策へつなげるべきか迷うことがありました。ロジックと感覚を行き来しながら、企画、体験、表現までを一貫して成立させる思考を身につけたいと思い、この講座に参加しました。
熊藤 直
口座残高だけで、未来のお金は判断できるだろうか?
今回、家計簿アプリをテーマにしたきっかけは、キャッシュレス決済を使う中で感じていた、少し曖昧なお金の感覚でした。
銀行口座を開けば残高は分かります。それなのに、「今日はあといくら使って大丈夫なのか」と聞かれると、自信を持って答えられない。クレジットカードでは今日使ったお金が減るのは翌月かもしれませんし、チャージ式なら実際に買い物をする前に口座からお金が減ることもあります。
便利になった一方で、「使った瞬間」と「実際にお金が動く瞬間」が離れたことで、今の自分にどれくらい余裕があるのかが見えにくくなっているのではないかと考えました。
最初は既存の家計簿を調べていましたが、そこで分かるのは主に過去のお金です。私が本当に知りたかったのは、「この先どうなるのか」でした。
そこでヒントになったのが天気予報です。降水確率そのものを知ることより、「今日は傘を持っていこう」と次の行動を決められることに価値がある。家計簿も、口座残高やカードの利用履歴といった数字を伝えるだけではなく、その情報をもとに、「今どのくらいお金を使える状態なのか」まで見せることができるのではないかと思いました。
Horizonでは、口座残高だけでなく、クレジットカードやキャッシュレス決済など、これから発生する支払いも含めて未来の残高を見通し、そこから「今使えるお金」を捉えます。
そして、その余裕の大きさを警告や強いメッセージで伝えるのではなく、画面上の水平線の高さとして表現します。お金を使える余裕が今どのくらいあるのかを、圧迫感を与えず、ひと目で分かるようにしました。
「○円まで使えます」と正解を与えるのではなく、少し先の状態を見ながら、「これなら使えそう」「今は待っておこう」と自分で判断できる。その状態をつくることが、Horizonで目指したことです。
私が出した答え|Horizon
過去のお金を記録するのではなく、これからのお金を見ながら今日を決める。
これから動くお金まで見渡しながら、今の自分にどれくらい余白があるのかを知る。
それが、Horizonで家計簿に加えたかった視点です。

金融アプリのリプロダクト作品「Horizon」
• 企画・制作:熊藤 直
• お問い合わせ先:X
LoveClip 南雲 玲香

受講理由
ディレクターからデザイナーへ転身してまだ日が浅く、ビジュアルの完成度にはどこか自信を持ちきれずにいました。見た目を整えるだけでなく、考え方やプロセスまで含めてアウトプットの質を高め、自分なりの表現を持てるようになりたいと思って参加しました。
南雲 玲香
人とつながる前に、自分の「好き」を残すSNSはつくれるだろうか?
好きな作品や場所に出会ったとき、その瞬間を残しておきたいと思うことがあります。
写真ならカメラロールに保存できますが、時間が経つほど埋もれていく。一方でSNSへ投稿すると、「自分が好きだから」という気持ちだけでなく、誰にどう見られるかまで意識してしまいます。
そこで、「好き」という感情を、まず自分のために残せる場所があってもいいのではないかと考えました。
途中では、人とのつながりをもっと中心に据えた案もありました。でも、それでは「誰かとつながるために投稿する」という既存のSNSに近づいてしまいます。振り返ると、本当に残したかったのは、人との関係よりも「何かを好きだと思った瞬間の自分」でした。
そこでLoveClipでは、「未来の自分に向けた、好きなコレクション」を中心に据え、写真だけでなく、そのときの感情ごとClipして残します。
画面も、一覧では好きなものが増えていく高揚感を、詳細では美術館でひとつの作品を見るような静けさを意識しました。「集める時間」と「振り返る時間」で密度を変えることで、自分の好きとの向き合い方そのものをデザインしています。
人とのつながりは、そのあとに偶然生まれるもの。
自分の記録を重ねていたら、その先に同じような熱量を持つ誰かがいた。そんな距離感がLoveClipには合っていると考えました。
私が出した答え|LoveClip
人とつながるために好きなものを投稿するのではなく、まず自分自身のために残す。
つながることより先に、自分の「好き」とつながる。
そんなSNSを提案しました。

SNSのリプロダクト作品「LoveClip」
• 企画・制作:南雲 玲香
• お問い合わせ先:非公開
ROOTED 長井 しおり

受講理由
デザインには一貫性が大切だと感じながらも、企画で考えたことを、体験やビジュアルへどうつなげればいいのか迷うことがありました。自分一人では伸ばしにくかった表現力も含めて、サービスの考え方からデザインまでを一本につなぐ力を身につけたいと思いました。
長井 しおり
金融情報を、自分のこととして受け止めるにはどうすればいいだろうか?
今回、お金との関係をテーマにしたのは、私自身がずっと抱えていた、うまく言葉にできない不安がきっかけでした。
お金についてもっと勉強すればいい。もう少し貯金が増えれば安心できる。最初は、そんなふうに考えていました。でも調べていくうちに、知識や金額が増えることと、自分自身が「これで大丈夫」と思えることは、必ずしも同じではないのかもしれないと感じるようになりました。
もしかすると問題は、正しい知識を知らないことではなく、自分のお金なのに、自分で「これでいい」と判断できていないことなのではないか。そう考え始めたところから、企画の見方が少しずつ変わっていきました。
金融ウェルビーイングについて調べる中で注目したのは、資産額の多さだけではなく、自分自身が現在や未来の状態に安心できているかという考え方です。そこで私は、自分のお金について、自分なりに「これでいい」と判断できる感覚を「納得」と捉えることにしました。
ROOTEDで目指したのも、世の中の正解へユーザーを導くことではありません。数字を見ながら、自分自身の生活や価値観と照らし合わせ、「私はどうしたいだろう」と考えられる時間をつくることでした。
そのため、一般的な金融サービスのように数字やグラフを一度に並べるのではなく、一か月をゆっくり振り返るレポートとして構成しています。
今月、日々のお金を無理なく回せていたか。もしものときの備えはあるか。目標へ近づいているか。そして、自分が大切にしたいことへ、きちんとお金を使えていたか。
数字を確認したあとに、そんな小さな問いが届く。
評価されるのではなく、自分自身と会話するようにお金を振り返っていく。
情報を理解するための画面ではなく、自分なりの「納得」を見つける時間そのものをデザインしたいと考えました。
私が出した答え|ROOTED
「あなたはこうすべき」と教えるのではなく、「私はこれでいい」と思えるお金との関係をつくる。
金融情報を増やすのではなく、お金と自分との距離を近づけることが、ROOTEDで目指したことです。

金融アプリのリプロダクト作品「ROOTED」
• 企画・制作:長井 しおり
• 所属:フリーランス
• お問い合わせ先:X
Interlude 上村 萌子

受講理由
ディレクター兼デザイナーとして仕事をする中で、ビジュアルの説得力や、自分の考えを形にする力に壁を感じていました。AIとの共存も含め、これからデザイナーに求められる力を考えながら、ロジックと表現の両方をもう一段深めたいと思い、この講座に参加しました。
上村 萌子
動画は、どうすれば心地よく終われるだろうか?
私は、動画を見ること自体を悪いものだとは思っていません。疲れた日に好きな作品へ没入したり、現実から少し距離を取ったりする時間は、むしろ自分にとって必要なものでもあります。
それでも、「今日は一本だけ」と思っていたはずが、そのまま次の動画が始まり、気づけば予定していた時間を大きく超えていることがありました。見ている間は楽しかったのに、最後には「また時間を使いすぎてしまった」と後悔してしまう。
その経験を振り返るうちに、問題なのは動画を見ることそのものではなく、自分で終わりを選べないまま、次の時間へ流されてしまうことなのではないかと考えるようになりました。
そこから生まれたのが、「映像と日常の間に、小さな合間をつくる」というサービスコンセプトです。
Interludeでは、視聴時間を強制的に制限するのではなく、まず視聴前に「今日はどんな時間にしたいか」を自分で決めます。一度映像が始まれば、作品への没入をなるべく邪魔せず、一区切りのタイミングでだけ、「このまま続けるか、ここで終えるか」という選択をもう一度自分に返す。
目指したのは、「止められた」という感覚ではありません。
自分で「ここまで」と決めて、映像の世界から日常へ戻っていけること。
その体験をどう視覚化するか考える中では、海や木漏れ日、小休憩、道しるべなど、いくつものムードを比較しました。最終的に最も体験全体と自然につながったのが、「夜明け」というモチーフでした。
映像へ没入している時間は暗く、終わりが近づくにつれて少しずつ光が差し込み、最後には日常の明るさへ戻っていく。その変化を一枚の背景として使うのではなく、UI、ロゴ、通知、モーションまで一貫して展開しています。
つまりInterludeでデザインしたかったのは、単にきれいなグラデーションではなく、映像から日常へ戻っていく時間そのものでした。
私が出した答え|Interlude
最終プレゼンでは、「動画を止めるためではなく、自分の時間に戻るために。」という言葉でまとめました。
動画を見ないためではなく、自分で選んだ時間として終える。
その小さな合間をつくることが、Interludeで出した答えです。

動画アプリのリプロダクト作品「Interlude」
• 企画・制作:上村 萌子
• 所属:momon design
• お問い合わせ先:Linktree
Kouseki 石田 優里花

受講理由
長くUIデザインに携わり、既存の構造の中で最適解を探す経験を積んできました。一方で、企画段階からコンセプトを立ち上げ、それを世界観やビジュアルまで一貫して形にする経験は多くありません。その領域まで自分のデザインを広げたいと思い、参加しました。
石田 優里花
人とのつながりと、言葉が広がるリスクを切り離せるだろうか?
SNSは、世間の今を知ったり、自分と同じものを好きな人と出会える魅力があります。
一方で、自分の言葉を発信した瞬間、その言葉がどこまで広がり、誰にどう受け取られるのかを、完全にコントロールすることはできません。想像以上の反応が嬉しいこともあれば、予想外の反応に戸惑うこともあります。
そんなSNSの良さと難しさの両方を感じながら、自分への反応を受け取る以外にも、人とのつながりを感じられる方法はないかと考えました。
そこで思いついたのが、人と人を直接つなげるのではなく、その間に「好きな言葉」を置くことでした。
Kousekiでは、本を読みながら、心が動いた一文へ線を引きます。その線は、まず自分自身がその言葉に立ち止まった記録として残る。そして、別の誰かも偶然同じ一文へ線を引いたときにだけ、「同じ言葉に、誰かも立ち止まった」ということが、そっと伝わります。
相手のプロフィールを知る必要も、リアクションを送る必要も、フォローする必要もありません。
好きな言葉を通して、人の存在を静かに感じられる。そんなつながり方を考えました。
デザインの出発点にあるのは、「好きな言葉は光って見える」という私自身の感覚です。
好きな言葉へ引く線は、自分がその言葉に立ち止まった痕跡として「光跡」のように残ります。
今の自分が残した線に、どこかの誰かの線が重なることもあれば、時間が経ったあと、過去の自分が引いた線と再び出会うこともある。
一本の光跡が、他者とのつながりだけでなく、自分自身の時間も静かにつないでいきます。
その考えをUIの中だけに留めず、ロゴやモーションにも展開することで、「好きな言葉を介して人の存在を感じる」というKousekiの体験そのものを、サービス全体の視覚表現へつなげています。
私が出した答え|Kouseki
同じものを好きになった誰かがいる。その事実だけを受け取るつながり方もあっていい。
好きな言葉が、人と人を静かにつなぐSNS。
それがKousekiで辿り着いた答えです。

SNSのリプロダクト作品「Kouseki」
• 企画・制作:石田 優里花
• お問い合わせ先:メール
何もない、たまらない、網走 山中 秀幸

受講理由
これまでの業務では一部の領域を担当することが多く、企画からUIまでを自分で設計しきる経験が不足していました。ロジックだけでなく、ビジュアルで人の心を動かすことにも向き合いながら、一つのプロダクトを自分の手で通して考えてみたいと思いました。
山中 秀幸
何もない観光地は、本当に魅力がないのか?
僕がテーマに選んだのは、今暮らしている北海道・網走市です。
地元の人からも観光客からも、「網走って何もないよね」と言われることがあります。最初は、観光サイトをつくるなら、その印象を変えるために魅力をもっと足して見せるべきだと思っていました。
でも、網走にはすでにオホーツク海も、広い空も、豊かな自然もあります。それでも「何もない」と言われるのであれば、足りないものを補うよりも、「何もない」という言葉そのものの意味を変えた方がいいのではないかと思うようになりました。
普段の生活を振り返ると、何もしていない時間は意外と少ないものです。仕事をして、通知を見て、次の予定を考える。休んでいるつもりでも、頭のどこかはずっと動いている。
そう考えると、何もない場所には、むしろ「何もしなくていい時間」があるとも言えます。
そこから生まれたのが、「何もない、たまらない、網走」というコンセプトです。
デザインでも、その考えをコピーだけで伝えるのではなく、画面そのものに反映しました。広い空や地平線の写真を大きく使い、その周囲にはしっかりと余白を残すことで、「何もない」ことを視覚的にも感じられるようにしています。
一方で、その言葉が寂しく聞こえすぎないよう、コミカルな人物や手書きのタイポグラフィも加えました。
網走自身が少し照れながら、「まあ、何もないんですけどね」と話しているような空気にしたかったんです。
私が出した答え|「何もない、たまらない、網走」
新しい魅力を足すのではなく、今ある網走の見方を変える。
「何もない」を弱点として隠さず、今の時代だからこそ欲しくなる時間として見せる。
それが、僕なりの答えでした。

9つの問いから、9つの違う答えが生まれた
9人の企画を並べると、完成したものは大きく異なります。どの企画も、最初から最後の答えが見えていたわけではありません。
調べたことで、最初に置いていた問題が違って見える。画面にしたことで、もっと大切にしたい瞬間に気づく。ビジュアルを考えたことで、言葉の奥にあった感情が見えてくる。考えることと、つくることを何度も往復しながら、それぞれの答えが形になっていきました。
同じ講座で同じプロセスを辿っても、最後のアウトプットが似なかったことは、とても印象的でした。
デザインには、リサーチの方法も、発想の方法も、整理の方法もあります。でも、その方法の先で同じ答えを出す必要はありません。
むしろ、何度も判断を繰り返すことで、自分は何に引っかかるのか。何を大切にしたいのか。どんな状態を心地よいと思うのか。その人自身の感覚が、少しずつ輪郭を持っていきます。
完成した画面を見るとき、その奥にある問いまで少し遡ってみる。すると、なぜこの機能なのか、なぜこの余白なのか、なぜこの光なのか。デザインの見え方も、少し変わってくるかもしれません。
9つの問いと、9つの答え。
その両方を含めて、今回のCREATIVE CLASSで生まれた成果として残しておきたいと思います。
生徒9名の思考〜制作のプロセスはこちら
企画がデザインになるまで ─ CREATIVE CLASS『ロジックとセンスのデザインブート』コース編


2026.10.30
9人の問い、9つの答え ─ CREATIVE CLASS『ロジックとセンスのデザインブート』アウトプット編